2019年5月18日~6月1日開催の「谷村明門展」に行ってきました。谷村明門さんは南三陸町出身の版画家。ふるさとである南三陸の心象風景をモチーフとした作品を拝見し、南三陸への想いを伺いました。
心象風景を表現
東京・国立市の閑静な住宅街にある画廊「荘」。谷村さんはここで20年以上個展を開いています。訪れると、オーナーと一緒に笑顔で迎えてくれました。どんな版画作品が並んでいるのでしょうか…。
目に飛び込んで来たのはモノクロの抽象的な作品たち。想像していたものとは違い、少し驚きましたが、なんだか訴えかけてくるものがあります。眺めているとその世界観に引き込まれるような…。
作品のほとんどは植物などの自然を題材としたもの。一見おどろおどろしいのですが、よくよく鑑賞すると、決して不気味ではなく、不思議な質量・空気感が漂っています。
谷村さんに、創作のインスピレーションについて聞いてみました。「主にモチーフとするのは自然、すなわち生命体ですね。私の創作は、テーマありきではなく、湧いてきた心象風景を表現するというものです。カラーの作品も手がけないわけではありませんが、しっくりくるのはモノクロですね」と谷村さんは話します。
創作の原点にあるのは、ふるさと・南三陸の海や森
谷村さんは旧志津川町で生まれ、10歳まで住んでいました。その後 石巻に引っ越し、大学卒業後からはずっと東京です。「南三陸で過ごした時間は長くなかったのですが、やはり故郷といえば南三陸です。私の作品の原点には、幼い頃に見ていた南三陸の海や森の風景がありますね」と谷村さん。海や森などの自然が身近にあった環境で生まれ育ったことが、谷村さんの創作に大いに影響を及ぼしているようです。
「子どもの頃の私にとって、南三陸の海は青くてきれいなイメージではありませんでした。嵐の前の海など、どんよりしたものなんです。森にしても、たとえば入谷の森は、薄暗くて気味が悪い存在でした」と谷村さんは振り返ります。その心象風景を表現した谷村さんの作品からは、大いなる自然に対する畏怖・畏敬の念が伝わってきます。
別の仕事をしながら版画家として活動する谷村さん。「これからもコツコツと作品を作り、個展のような場で発表することで自分の世界観を伝えていきたい。そして、それに共感してくださる方が少しずつでも増えるとうれしいです」と話します。
「いつか南三陸でも作品を披露したいですね。今の現実の風景とは大きく違うと思いますが、自分の中の南三陸を見てもらいたいと思っています」
南三陸での谷村さんの個展、ぜひ実現してほしいですね!