志津川湾って、すごい!シリーズvol.5「ラムサール条約登録湿地になるんだって?」

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いよいよラムサール条約登録を目前に控えた、志津川湾。そもそもラムサールってなんなのさ?と思ったそこのあなた。今回はラムサール条約についてお話ししよう。

ラムサール条約って、何?

小学校の社会の時間や、テレビのニュースで聞いたことがある人が多いと思う。ラムサール条約は1971年2月2日にイランの都市ラムサールで開催された国際会議において採択された条約で、正式名称は…

「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」

採択された地名にちなんで「ラムサール条約」と呼ばれ、その目的は破壊されやすい湿地の保全だ。

なるほど、水鳥のために湿地を守る条約なのかと思ったそこのあなた。水鳥だけのためのものではないのだよ。湿地という言葉が含む環境は実は幅が広く、湿原・干潟・田んぼをはじめとして、川・湖・湧き水・ため池・水路、さらには海辺のマングローブ林、海中の浅瀬の海藻が生い茂る藻場、サンゴ礁までも「湿地」に含まれている。私たちは田んぼからお米を、藻場や干潟からは海産物を、川や湧き水などからは生活に欠かせない水を得ているし、海水浴や散策など遊びや憩いの場としても利用している。湿地が健全な状態であることは私たちの生活の支えになっているんだ。つまり、私たちのための条約でもあるということだ。

ラムサール条約は、「保全・再生」、「賢明な利用」、これらを促進するための「交流・学習」、この3つの行動や考えを柱に、湿地の保全に取り組んでいくことになる。

どうして志津川湾が登録されるの?

みなさんご存知の通り、志津川湾は寒い海に生育するマコンブと、暖かい海に生育するアラメが共存する代表的な藻場として、日本の中で貴重な場所となっている。また、冬に多くの海鳥たちが越冬のために志津川湾へやってくるのだが、この中には絶滅危惧種で国の天然記念物にも指定されているコクガンという貴重な鳥も含まれる。これらのことから条約に関わる9つの国際基準のうち、志津川湾は5つの基準を満たしている。これに加え、2015年に三陸復興国立公園に指定されて自然公園法で守られることとなった。

豊かな自然環境と、自然公園法による保護・保全があって登録へと向かっているのだ。

登録されるとどうなるの?

国際的に重要な湿地として発信され、注目されるんだ。特に志津川湾は日本国内では初めての海の藻場での登録になる。注目されるということはそこでの「賢明な利用」による生産物のアピールにも繋がる。

例えば、大崎市では国内有数のマガンの越冬地、蕪栗沼とその周辺の水田が条約湿地となっている。ここでは冬にも水田に水をはっておく冬水田んぼがある。冬の間も水をはっておくことにより、雑草が減る効果があると同時にマガンたちが休憩場所として利用する。そこで作られた無農薬・無化学肥料で作られた「冬水田んぼ米」を、マガンをはじめとする渡り鳥と人間との共生をアピールする特産品として売り出している。これにならった利用をみんなで考えていこう。

一方で注目されるということは、その湿地を保全・再生していかなくてはならないんだ。保全しながら、賢明に利用していく。その結果、私たちは自然からの恵みを受け取ることができるんだ。いま流行りの言葉で言えば「持続可能な利用」にもつながる。

志津川湾がラムサール条約登録湿地になるということは…

志津川湾がラムサール条約登録湿地になる。ということは、私たちは志津川湾をより一層、大切にしていかなければいけないね。大切にするということは全く触れない、利用しないことではない。上手に利用していくことだ。多くの生き物が生息・生育できて健全な生態系があって、初めて私たちが水産物や農産物を得ることができる。

海は人間が管理・コントロールしているものではなく、海を利用する全ての生き物が互いに影響しあい、その結果が反映されるものなのだ。いま一度、私たちと海との関わりを考える機会なのだ。

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