文教地区として整備が進む志津川中央団地において、2018年1月31日、町立志津川保育所の落成式が行われました。震災から7年近く、「暮らし」の復興は新たなステージを迎えています。
安全・安心な子育て環境づくり
震災後の南三陸町では、復興事業における主要政策の一つとして、町立保育所の再整備を進めてきました。子どもたちの健やかな成長を促し、子育て世代の仕事と家庭の両立を支援することが、町の将来を担う人材を育てることにつながるからです。元の町立志津川保育所は、津波で浸水被害を受けた後も子育て支援拠点の一角を担ってきました。しかし、施設の老朽化が著しく、宮城県の土砂災害警戒区域に指定されたこともあり、保育所の移設工事が行われることとなりました。
建設場所に選ばれたのは、志津川中央団地。志津川小学校やスーパーなどが近くにあることから、子育て世代が多く入居しており、文教地区として整備が進んでいます。災害が起きた場合でも、津波が迫る危険は平地に比べ小さく、小学校が隣にあるため避難も速やかに行えます。保育所の中村美佐所長は、「小学校の校長先生とも話し合っているが、児童同士の交流会など、様々な連携をしていきたい」と話していました。
さんさん、のびのび
「とにかく明るい保育所になりました。お日様がさんさんと差して、本当に子どもたちがのびのび遊べる、施設・環境になりました」。新しい保育所には、中村所長もこう話すように、安全・安心への配慮だけでなく、子どもたちが健やかに育つことを促す工夫も随所に見られます。
保育所は住宅街が一望できる高台に建てられたため、とても陽当たりが良い立地となっています。落成式当日は晴天に恵まれ、広い園庭の上には透き通るような青空が広がっていました。
遊戯室や園庭など、子どもたちがのびのびと遊び回れるスペースが用意されています。加えて、建物の内装は、廊下、保育室、遊戯室など、随所に木の温もりを活かしたつくりとなっています。床や壁、柱だけでなく、遊び道具や棚にも、木材をふんだんに使っています。
町内外から寄付と祝福の声
落成式では、志津川保育所の新たなスタートに向けて、数々の寄付やお祝いの声が寄せられました。
佐藤仁町長は、保育所移設の背景、復興計画における位置づけなどを振り返ったのち、「将来にわたり、多くの子どもたちの笑顔・元気があふれる町となるよう、持続可能なまちづくりを行い、第二次総合計画に掲げております、『森・里・海・人 いのちめぐるまち 南三陸』の実現に向け、邁進してまいります」と今後の展望を語りました。
町議会の三浦清人議長は、移設前の保育所について「浸水はしたものの、生活再建の後押しとなるよう、施設の修繕を行い、いち早く受け入れを再開し、これまで地域の大切な子どもをお預かりしていただいた施設」と意義づけをしたうえで、「町の未来を担う子どもたちの健全育成のため、議会としては、保護者の皆様や地域の声を大切にしながら、町と連携し、その推進に努めてまいります」と述べました。
宮城県気仙沼保健福祉事務所の渡辺龍明所長は、県行政との連携について「地域における児童福祉の復旧・復興を推進していくためには、本日ご参加の皆様のお力添えが必要となります」と述べ、「志津川保育所が地域の皆様に末永く親しまれますよう心からご祈念申し上げます」と結ばれました。
式の後半には、保育所建設にあたりご寄付をいただいた、DFSグループリミテッド トラベルインダストリーマーケティング 小川光永様、津山木工芸品事業協同組合 佐々木喜市様、米沢市語り部ボランティア 笈掛昇様と、保育所児童の記念撮影が行われました。式典には、町内の学校関係者、民生委員児童委員、行政区長など、多くの方々が参列し、志津川保育所の新たな始まりを祝福しました。
未来広がる文教地区へ
式典では、祝辞ののち、志津川保育所に入所している児童27名から、保育所建設への感謝を伝える言葉と歌のアトラクションが披露されました。
「ぼくたち わたしたちに すてきな ほいくしょを ありがとうございます」
「はやく ひろい おにわで おにごっこがしたいです」
「これからも ほいくしょで みんなとげんきにあそんだり ちからをあわせて がんばります」
子どもたちが言葉と歌でまっすぐに感謝を伝えたのち、会場は温かい拍手に包まれていました。
「官民、地域が連携し、安心して子育てができる環境づくりを推進しながら、更なる子育て支援の充実を図って参りたい」と今後の意気込みを語る佐藤町長。「元気な子ども、明るい子ども、何でも自分の力でやり抜く子ども、そして自分の命は自分で守る子どもになってほしい」と願う中村保育所長。まちの大人たちの期待を受け、新しい保育所では子どもたちのどんな未来が広がっていくのでしょうか。南三陸町の「暮らし」の復興は、志津川保育所の落成とともに、次の一歩を踏み出しました。