2017年3月に町内すべての災害公営住宅が整備完了となった南三陸町。各地では新たなコミュニティを育もうと住民間の交流活動が盛んに行われています。グラウンドゴルフを通し交流を図る志津川東復興住宅にお住まいの皆さんにお話を伺いました。
演歌で体操?グラウンドゴルフ愛好会の朝
晴天にも恵まれ絶好の行楽日和になったこの日、南三陸町沼田地区にある町営志津川東復興住宅の広場から三陸地域で親しまれている曲「北国の春」が聞こえてきます。どうやらラジオ体操の真っ最中。みんな、曲に合わせて腕や足を大きく伸ばしたり縮めたりしています。
今年3月にすべて完成した南三陸町の災害公営住宅。そのなかでも志津川東地区の復興住宅は、病院や役場などに近いため、入居者のうち高齢者が占める割合が高くなっています。
天気は関係ない!毎日楽しくプレー
ラジオ体操を終えるとグラウンドゴルフがはじまりました。
皆さんにお話を聞いてみると、どうやらグラウンドゴルフは晴天時だけプレーされているわけではなく、雨天時は室内にホールを設置し、距離を工夫して楽しんでいるとのこと。
この日は東復興住宅の広場を利用して15m~20mのホールが4つ設置され、それぞれ5~6人ずつ1組のチームとなってプレーしていました。15名ほどの参加者が、会話を楽しみながら、グラウンドゴルフを楽しんでいます。
グラウンドゴルフを楽しんでいるのは、志津川東地区の復興住宅で生活している人だけではありません。団地がある志津川東地区に自ら住宅を再建した人も一緒にプレーしているとのことです。
この日プレーを楽しんでいた古澤孝夫さんも住宅を再建した一人。古澤さんはグラウンドゴルフ愛好会に所属しながら南三陸町高齢者クラブ連合会の会長も務めていいます。
「若さの秘訣は皆集まってグラウンドゴルフをすることだね」と声を弾ませます。
広さが十分でない広場では、限られたコースでプレーするしかありません。しかし、一球一打に「わあ!」と大きな歓声があがりほど大盛り上がり。
プレー中にも、みんなのおしゃべりが止むことはありません。志津川東地区で生活するグラウンドゴルフ愛好会のみなさんのあふれるほどのパワーは、グラウンドゴルフを介して生まれる住民同士の日々の交流のたまものかもしれません。
グラウンドゴルフ愛好会と南三陸町のこれから
「私たちはとにかく集まる場所が欲しいの。晴れでも雨でもね」と話すのはグラウンドゴルフ愛好会の会長を務めている佐藤清太郎さん。
東地区の高齢者クラブでも副会長を務めている佐藤さん。高齢者クラブでの話し合いでは、ある不安が口にされるといいます。
「私たちは引きこもりが心配。お互いを気にかけて生活しているんです」
実際に、過去の阪神淡路大震災などでは、仮設住宅で生活する高齢者の孤独死が大きな課題となっていました。その教訓をふまえ、東地区のグラウンドゴルフ愛好会ではグラウンドゴルフ以外にも、「お茶っこ会」など、さまざまな団体と共同しながらイベントを行っています。
災害公営住宅の建設が終わり、生活再建が進む南三陸町。今回紹介した志津川東地区の災害公営住宅のように、さまざまな形で人々が集う場所が生まれてきています。新たな形でうまれていく「コミュニティ」こそがこれからの生活の鍵になっていくでしょう。