町内唯一の私立幼稚園である「あさひ幼稚園」は、現在仮設園舎にて教育活動をおこなっています。間もなく沼田地区に完成を迎える本設園舎を心待ちに、子どもたちがどんなくらしを送っているのか覗いてきました。
町内唯一の私立幼稚園として
保育所と幼稚園の違いって知っていますか?
町内には現在7ヵ所の保育施設があり、町立の認可保育所が3ヵ所・認定こども園が町立1民間1の2ヵ所・事業所内保育所が1ヵ所・私立の幼稚園が1ヵ所です。
保育所が厚生労働省管轄の「児童福祉施設」であるのに対して、幼稚園は文部科学省が管轄の「学校教育施設」。先生の呼び名も「保育士」「教諭」と異なります。小学校に入る前の“教育を受ける場”と位置づけられているんですね。
そんな町内唯一の幼稚園である「あさひ幼稚園」にお邪魔し、子どもたちがどんなくらしをしているのか伺ってきました。お話を聞かせてくださったのは山内祐子先生です。
あさひ幼稚園について教えてください
―今は園児の数は何人ですか?
現在は34人の子たちが登園しています。定員120人に対し、少子化や震災の煽りも受けて、大分少なくなりました。
―今も仮設園舎となっていますが、震災以後ご苦労されましたよね?
震災以前は志津川駅裏の低地部にありました。園舎が流出してしまったので、その後、小学校の教室を間借りしたり、転々としながら現在に至っています。計5回引越しをしていますね。
―アスファルトの園庭が、子どもたちにも可哀そうですよね。
最初はケガなどを心配しましたが、逆に子どもたちはどんなところでも上手に遊ぶんだと、その順応性に驚かされました。
遊具やおもちゃが少なくても子どもたちは楽しく遊びますし、かえって少ない遊具を譲り合って使う気持ちが育まれています。
―加えて、現在の園舎は海や荒島が臨める最高の景色ですね。
保護者の方々の理解も得られ、今では景色も良いのびのびとした空間で過ごせていると感じています。
仮設園舎から本設園舎へ
―あさひ幼稚園といえば、サッカー日本代表の長谷部選手でおなじみですね。
震災で園舎を失いましたが、ユニセフの支援で再建に至りました。被災してしまった大雄寺の塩害杉が使われた、木のぬくもりのある園舎です。
―どのようないきさつで?
元々、ユニセフの活動をしていた長谷部選手の名前を出すことで、町にも活気が出ればという配慮だったと思います。
年に1回は園を訪れ、子どもたちとサッカーをしたり、紙芝居の読み聞かせや工作、人形劇を演じたりなど楽しい時間を一緒に過ごしています。
先生たちやママからもとても人気ですよ。
―現在はその園舎も使えないんですよね。
復興住宅地の造成と、園舎の増築のため、現在はこの仮設園舎で過ごしています。10/20には新園舎も完成予定で、11月からはそちらで活動します。
―新しい園舎、楽しみですね!
ぜひ遊びに来てください!新しい園舎も木造で、ようやく子どもたちも本設の園舎で健やかに過ごせると思います。
子どもたちとどう遊ぶか、どんな園をつくっていくか、わくわくしています。
―沼田の東団地、という復興住宅地に位置していますよね。
新しい町に入っていくので、地域の皆さんと仲良くしていきたいと思っています。園の周辺の住宅地がどうなるのかがまだ見えてこないので、その点は不安もありますね。
住宅地の中ですが、大きな木も植えられ、子どもたちに子どもたちらしい遊び方をしてもらいたいと思っています。
仏教ようちえんとして
―仏教に基づいた幼稚園なんですよね?
志津川地区田尻畑にある大雄寺の住職、小島孝尋が園長を務めています。
保育目標として、
- 尊い生命を拝みあい
- 明るい心と丈夫な体をつくり
- 此の世に於けるくらし方のルールをわきまえ
- 世のため人のためにつくし
- 恵みに感謝できる人間像にする
を掲げています。
―すてきな保育目標ですね。
毎朝にはお経を読みます。結構長いフレーズなんですが、子どもたちはしっかり覚えて暗唱しています。年間の活動にも座禅会があり、園長の奥様が教えるお茶会や生け花もあります。
―間もなく運動会ですよね。
10月の運動会に向けてがんばって練習しています。年少さんはカラーガード隊、年中長さんで鼓笛隊をやるのが伝統なんですよ。
どんな園を目指していますか?
―この町で子どもたちが育つ魅力はなんでしょう?
季節ごとの自然やそこにくらす生きものなど、“ホンモノ”に触れられる地域というところだと思います。ダンゴムシやカマキリなど、生きものたちは子どもたちにも大人気なんですよ。
―自然豊かな環境での子育て、いいですよね。
自然の中での経験は、ゲームや室内遊びでは得られない体験をすることができますからね。こうした体験や経験を大切に、新しい園舎も自然豊かなつくりになっています。
―どんな園を目指していますか?
子どもたちが心身ともに豊かに過ごせるよう、過ごしやすい環境を提供する園にしていきたいと思っています。
新しい園舎と子どもたちの未来が楽しみ!
アスファルトの上の仮設園舎という限られた環境の中で、子どもたちはすくすくと元気に育ち、過ごしていました。
また、先生のみなさんは、地域の魅力に子どもたちを触れさせたいという素敵な想いのもと、子どもたちをあたたかく見守っていらっしゃいました。
着々と復興していく町の中に、子どもたちの声あふれる新しい園舎が、間もなく完成します。
新しい未来の町の中で、ここで育った子どもたちがどのように活躍していくのか、期待が膨らみますね。