いろいろな人が活躍できる土台をつくりたい。

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南三陸町に移住し起業活動をおこなう「地域おこし協力隊」隊員を紹介していく連載企画。第7回は、隊員と町役場そして地域との間に立ち、隊員たちの事業進行をサポートする鈴木麻友さん。いろいろな人が活躍できる町の土台をつくりたいと、自身も神奈川から移住して来ました。

協力隊員と、地域や行政のつなぎ役

地域おこし協力隊の制度を用い、様々な起業家の誘致に取り組む南三陸町。

現在11名在籍する協力隊員たちはみな移住者であり、こうした小さな町で事業を進めて行くうえでは、地域や地域住民との密接な連携が欠かせない。そのためほとんどの隊員たちは、それぞれのプロジェクト内容に応じて、地域のパートナーとなる人物や事業者たちと共に事業を深めていくシステムになっている。

そんな地域のパートナーやそのほか関わる多くの町民の方々、そして協力隊事業の導入主である町役場と隊員たちとの間に立ち、調整役を担うのが株式会社ESCCA「事業コーディネーター」の鈴木麻友さん。

平成29年10月に、勤めていた大手メーカーの技術営業職を離れ、神奈川県から移住してきた。

鈴木さんの所属する株式会社ESCCAは、大きく言うと人を育てることが主たる事業だ。

地域おこし協力隊の制度を利用した起業家の誘致と育成もその1つ。

町での起業を志す人たちに向けた創業支援に関する起業家育成プログラム「SESSIONS」も、1年間の第1期を終え、今年度第2期がスタートした。

そのほか、春夏の年2回開催される復興庁「復興創生インターンシップ」では、町内の企業数社に大学生10名ほどが1ヶ月にもわたり滞在し、経営者たちと共に経営課題の解決に挑むが、鈴木さんたちは地域側コーディネーターとして、経営者らとの事前のプロジェクト設計や、学生が滞在中のサポートを担う。

協力隊員のサポートに関する業務は実に多岐にわたり、まさに着任前から任期満了まで、隊員・行政・地域との4人5脚である。

こんな事業に取り組んでみたい、こんな町にしたい、と夢をもつ事業者や行政メンバーたちと話し合いながら3年での事業化を見据えたプロジェクトを設計し、プロジェクトを推進する人材を募集する。募集にあたっては説明会から選考、着任後の住居探しや自動車の手配などを手掛ける。

もちろん着任がスタート地点。事業立ち上げに関するサポートをはじめ、勤怠や予算の管理なども行政から任されている。

鈴木さんの社内での肩書は「事業コーディネーター」。現在は4名の隊員を担当し、彼らと伴走している。

協力隊メンバー全員での合同ミーティングを隔週で企画し、各々の活動状況や学びの共有、メンバーがより活動しやすい環境整備に向けたアイデア出し、時にはメンバー同士のコラボレーション企画の検討なども行う。

またメンバーそれぞれと一対一の個別ミーティングも定期的に実施し、プロジェクトの進捗やスケジュールの確認、課題の整理、地域の情報共有などを行なっている。

11名の協力隊メンバーたちは、取り組むプロジェクトも様々であれば人間性も十人十色。

個性豊かなメンバーそれぞれと、それぞれに適した接し方をできるのは、まさに明るい鈴木さんの人柄のなせる術だ。

「同時に複数の人々と協働しながら人や事業をつくり上げていくには、前職の時とは違う頭の使い方が必要なところもあり日々試行錯誤の連続。けれどその一つ一つがこの町の未来につながっていくと考えるととてもわくわくします!まちづくり・ひとづくりに関わることで町の土台をつくり、いろいろな人が向上心を持って活躍できる地域を作って行きたいです!」

鈴木さんの移住のきっかけは、こうした町の土台づくりへの興味・関心からだった。

“小さなところから社会を変えて行きたい”

東京都で生まれた鈴木さんは、転勤族だったご両親と共に全国各地を転々とし、移住前は神奈川に在住していた。都内の大学では都市計画を専攻。主にアジアの途上国の国家戦略や発展に関心を持っていたそう。

「バンコクに行った際、高い展望台から町を眺めると、都市と自然の境界線を目の当たりにすることができたんです。こうやって都市が拡大していくにつれて自然が減っていくのだな、と感じ、自然に負荷がかからないよう便利な暮らしが発展していくために、日本のまちづくりのノウハウが活かせないか、と考えました。」

途上国のインフラ整備に関わりたいと、大手メーカーに就職。鉄道やバスなどの公共交通に関するプロダクトの技術営業を4年間経験する。研究職と技術職と営業職の間に立ち、思えば前職も同様に、色々な人たちの調整役を担っていたという。

「大手メーカーに勤めて、日本の高い技術力に触れることができて、こうして戦後の日本は経済成長してきたんだなと、とても誇りを持って仕事をしていました。」

鈴木さんと南三陸町との出会いは、少し時を遡り、彼女が学生の頃だった。

大学4年生の卒業を迎え、大学院への進学を控えた頃に震災が発生。卒業式や入学式は中止となった。

大学院への入学間もない4月の下旬、先輩に誘われ南三陸町へボランティアに。

主にベイサイドアリーナで物資の仕分けや配給の手伝いなどをおこなった。

その後もボランティア活動や研修等で、気仙沼・女川なども含め数回訪問。移住という意識はなかったが、なんとなしに三陸沿岸への関心は持ち続けていた。

そんな折に、現在の勤め先の代表である山内亮太氏に出会い、南三陸での協力隊事業の立ち上がりを知る。

同時に山内氏から、よければ南三陸に来て一緒に取り組まないかと誘いを受けた。

「当時担当していたプロジェクトがひと段落するまでにはもう数年かかりそうで、どうしてもそこまで見届けたかったので、一度はお断りしました。」

業務でアジア諸国と関わる中で、中国や韓国などがより安く早く技術が優れた製品をどんどん世界に送り出していることを感じた。

そんな中で日本が一歩先を行っている点は“他国よりも高齢化が進んでいる”という点だった。諸外国も近い未来に高齢化社会を迎えることを見越すと、日本の“人口減少・高齢化社会の中でのまちづくり”という知見がゆくゆくは他国にも活かせるのではないかと考えた。

「自分の力をそこで活かしたいと思って、それだったら大都市より、より高齢化の進んでいる地方社会の方がいいかも、と思い始めました。」

他地域に行くのであれば縁のある南三陸が良いだろうと、移住に向けて考え始めた。

周りの人に意見を聞いたり、自分の将来年表を描いてみたりもした。

現在担当しているプロジェクトを見届けたいという想いとの葛藤の末、このタイミングでの移住を決心する。

「町の復興の過渡期であり、たった1年で町の状況が大きく変化する時期で、ちょうど協力隊事業が立ち上がったばかりでもあったし、行くなら今しかないと思ったんです。」

幸い周りの多くの人にも恵まれていて、プロジェクトの残りは信頼できる仲間たちに任せられると感じた。

上司からの「これで終わりではなく、またどこかで一緒に仕事ができるといいね」という送り出しの言葉も印象深い。

「大きなところは大きな会社に任せ、私は小さなところから社会を変えて行こうと思いました。」

ボランティアで訪れた町が、暮らす町に

転勤族育ちだったため、新しい町での生活には大きな抵抗もなく町へ移住。

町内のシェアハウスで、移住者6名ほどで生活を送っている。時には国内外からやってくる短期入居者が加わることもあり、バックグラウンドが多様なメンバーとの会話から得ることは大きいと言う。

鈴木さんの仕事にかける熱意や、“色々な人が向上心を持って活躍できる地域をつくりたい”と語るまちづくりの想いからは、有り余るストイックさをいつも感じる。

そんな性格が趣味にも出ていて、休日には運動を欠かさない。

「東北風土マラソンをはじめ、フルマラソンは過去3回完走しました。月2~3回くらいはジムやプールに通ったり、自宅の近所でもたまに走っていますね。」

震災から1か月足らず、まだ電気が通ったばかりのベイサイドアリーナにボランティアに訪れ混沌とした雰囲気を味わったのが、現在では居住して同じ施設で身体づくりをしているのが、とても感慨深いそうだ。

最近は役場職員のみなさんと登山にも行っているとのこと。

「昨年秋に訪れた栗駒山の紅葉がとてもきれいでした。ふらっと気軽に、身近な自然に触れられるのが町の魅力ですね。自宅のカーテンを開けると田んぼが見えて、四季を映し出していて。三陸道で夜帰ってくると、町に入った瞬間にふっと星がきれいに見えたりもして。」

「地域の食材が美味しいし、産直に通い始めたら、それ以外で買い物する気がしなくなってしまいました。神奈川にいた頃は“○○産”と有名な産地が書いてあるだけで美味しそう、と思っていましたが、考えてみれば地元の神奈川産の方が当然新鮮なはずで、地元産のものをもっと食べていればよかったな、とこちらに来て気づかされました。」

と、美しい自然と豊かな食に包まれた現在の暮らしをとても満足げに語ってくれた。

移住して早1年、新たな仕事を始めてからどんどんと知り合いも増えている。

「とにかくいろいろな業種業界の人と関わるようになって、いろいろなことに興味を持つようになりました。何を見ても好奇心が湧いてきて、もっと知りたいと思って以前よりも本を読むようになりましたね。アウトドアチェアを買ったので、温かくなったら海辺でコーヒーを飲みながら本を読むのが楽しみです。」

 

12月・1月と新たに3名の協力隊員が着任した。

ランナーである鈴木さんにとって“スタートダッシュ”はとても重要だ。

新メンバーたちの事業が今後どういう風に進んでいくのか、上手にスタートダッシュが切れるようサポートしたい、と抱負を語る。

「総勢11名になるゆかいなメンバーと、50年・100年後を見据えて、今を楽しむ人々が集まる町をつくっていけるよう、万全の体制で挑んでいきます!」

鈴木さんの伴走のもと町の未来へ駆けて行く地域おこし協力隊を、ぜひ応援してください!

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