志津川湾って、すごい!シリーズvol.4「あんな養殖、こんな養殖」

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皆さまこんにちは。そろそろ覚えていただけただろうか?海研一です。豊かな志津川湾の魅力に迫る連載企画第4弾。今回は、豊穣な志津川湾を舞台に行われる養殖業を紹介します。

ワカメ養殖

2011年の東日本大震災で南三陸町の養殖は大打撃を受けた。その後、世界や日本中から沢山の支援を受け、国、県、そして宮城県漁協や漁師さんや地域の方の頑張りで、今は豊かな海の志津川湾でギンザケ、ワカメ、ホタテ、ホヤ、カキなどを食すことができるようになった。

まずはワカメ。ワカメは秋から冬にかけて発芽して成長し、春から夏にかけて成実葉(メカブ)から遊走子を放出したのち枯死流出する1年生の海藻だ。

日本で生産されているワカメの9割は養殖されたものだ。養殖のワカメは、11月中旬頃から2〜5センチの長さに切った種苗を一定間隔で縄に挟み込み、12月下旬から1月上旬ころ養殖施設を用いた本養殖を始める。成長は早く、2月頃には生わかめしゃぶしゃぶなどできる柔らかくて美味しいワカメを間引いて、その後大きくなったワカメを刈り取り、湯どうし塩蔵わかめに加工し、出荷する。ワカメの刈り取りの後はメカブ(ワカメの成実葉、胞子葉(ワカメの根元部分)などの生殖細胞が集まったところ)の刈り取りだ。あのねばねばとしたスーパーなどでパック売りされているメカブとワカメは同じものなのだ。知ってたかな?メカブについて詳しくは今後の記事をお楽しみに…

ワカメは低エネルギーで食物繊維が多く、ヨウ素を初めとしたミネラルを豊富に含みアルギン酸が大腸の動きを活発にし、ビタミン類を野菜並みに含む健康やダイエットのためにもとても良い食材なのだ。

ギンザケ養殖

次にギンザケ。志津川湾は日本でのギンザケ養殖発祥の地だ。そして今も水揚げが日本一である。

ギンザケは12月から次の年の10月頃まで山の淡水で育ち、11月に海にある養殖いけすに移動(1つのいけすに約3万匹)4月まで約1キロになり、4月から7月くらいの間に水揚げされる。水揚げされたギンザケは魚屋、お寿司屋、料亭、居酒屋で食されたり、加工工場で加工されたりしてみんなの食卓へ届く。

ギンザケは養殖だから特定の固形飼料(魚の粉、大豆、ミネラル類が含まれる)によって管理されているので、回遊魚特有のアニサキス(寄生虫(線虫))の心配がない!冷凍せずに刺身で安心して食べられる。また、ギンザケにはビタミンA、ビタミンE、多価不飽和脂肪酸(EPAやDHA)が多いので美容と健康、疲労物質も軽減されるなど栄養も豊富だ。

ホヤ養殖

ホヤは海のパイナップルとも言われ夏の味覚とされている。

ホヤって一体何者?貝なの?と思う人は多いと思う。実は貝ではない!容姿も独特、大きな突起が2つ、プラス(+)マークに見える方は海水とエサを取り込む入水孔、マイナス(—)マークは排泄や産卵のため(卵・精子)の出水孔だ。幼生の時はおたまじゃくしのように泳ぎ、付着突起で岩や貝など適当な場所に付着する(一度付着すると、一生をそこで終える)貝よりは分類上人間に近い脊索動物門・尾索動物亜門・ホヤ網に属する動物なのだ。

市場に出回っているホヤ(マボヤ)はほとんどが養殖で、2年半から3年半かけてじっくり育つ。海の中で1年目は1cm、2年で約10cm2年を過ぎると急に大きくなり2年半(3年子(3ねんこ))で出荷する。ホヤは味覚の基本要素(甘味、塩味、酸味、苦味、旨味)が揃った珍しい食材で独特の風味がある。これはマボヤ特有の不飽和アルコールによるものだ。マボヤを食べた後日本酒や水を飲んでみてくれ。グリシンやアラニンというアミノ酸とグリシン・ペダインという塩基が作用するため、甘くおいしく感じるはずだ。そしてさらに、ホヤは肝機能を高めるタウリンなどを合有し滋養強壮にも美容にも良い!南三陸のソウルフードだ。

ホタテ養殖

ホタテは冬の寒さ厳しい中、天然採苗や稚貝を県外から購入し養殖をしている。垂下養殖の垂下方法には様々な形態があるが、南三陸町は、殻の“耳”部分に2mm程度の穴をあけ、個々にテグスを通し繩に吊るす方法が主流だ。

ホタテは変わった生態で、生まれてから1年は全てオスで、2年貝以上で半分がメスへと性転換することが知られている。産卵前は、卵巣はピンク、精巣は白色に変化するため雌雄を区別することができる。産卵後は生殖巣の色が消え透明になるため再び雌雄の区別がつかなくなる。成長は、養殖では2年から3年で11cmくらいになり、春と秋によく成長し、夏と冬に一時止まる。夏に向けて成長が止まるのは高水温や産卵後の活力低下のためと言われている。また成長が止まる時に殻表にできる成長輪で年齢がわかる。

ホタテには、旨みのアミノ酸や、網膜の発育や視力低下の防止につながる、肝機能を強化するコレステロール系の胆石を溶かす、元気が出るなどの効能があるタウリンが含まれ、さらに亜鉛やカリウム、マグネシウム等のミネラルも多く含まれ、コレステロール分も少ないという低カロリーの健康食品である!と言える。

カキ養殖

冬の味覚の代表はカキ!私達の口にするカキ(真牡蠣)のほとんどが養殖によって生産される。カキの産卵時期は7〜8月、1度の産卵で5000万もの卵が放出され、これが白い煙の様に水中に出された精子と出会い受精する。採苗は、この頃に採苗器(ホタテの貝殻を縄につけたもの)を筏に吊り下げ、マガキの幼生(約3mm)を付着させることでおこなう。養殖しているカキを、海水に浸かる時間を少なくして大きくせず、真牡蠣を鍛え抵抗力を与える抑制という工程を経ながら、海中に吊り下げ1〜2年の間育成させる。収穫はカキを吊すロープの長さが、はえ縄式の場合(東北太平洋沿岸では「はえ縄式」が一般的)10mもあるのでとても重く、クレーンを使って収穫する。出荷は、滅菌海水に殻のまま23時間以上掛け流しで浄化し殺菌してから、漁師の手によって剥かれ、また滅菌海水で洗って出荷となる。震災後の南三陸町戸倉地区では震災前からの密殖をやめたことで成長が早く、牡蠣を1年で出荷できるようになった。

カキはミネラル類が豊富で、とくに亜鉛と銅を沢山含んでいる。亜鉛は新しい細胞が生まれる際に欠かせないミネラルで、成長期の子どもには欠かせない成分だ。また、ナトリウムやマグネシウム、カルシウムも豊富に含まれる。海のミルクと言われ栄養もあり美容にも良いとされる。

さらに国際環境認証であるASC認証を取得し、カキをおいしく安全に食卓に届けている。ASCについてはまたの機会に!!

人の食をとても豊かにする5つの水産物が志津川湾で養殖されている。志津川湾は、これらが養殖できる懐の深い豊かな海であることがわかるだろう。志津川湾はすごい!!

さて次回はラムサール条約の登録湿地についてお話ししよう。

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