仲間とともに20年。変わらぬ想いがある。/千葉秀くん

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南三陸に生きる⼈を巡り、⼀巡りしていく連載企画「南三陸ひとめぐり」。第20弾は「平成29年度南三陸町成人式」の実行委員長千葉秀くん。中学1年生のときに起きた大震災。変わりゆく町とともに激動の年月を過ごしてきました。

激動の時代を過ごしてきた今年の新成人は152名

今年、152名の南三陸町の若者が成人式を迎える。1997年4月2日から1998年4月1日に生まれた人が対象となる今年の成人式。東日本大震災が、育ってきた故郷を襲ったのは、彼らが中学1年生のとき。もっとも多感な時期に襲った大災害。中学・高校という人生においてもかけがえのない期間、そして進学や就職といった人生の大きな節目は、変わりゆく町とともにあった。文字通り、激動の時代を生き抜いてきた若者たちが、晴れて新たな門出となる成人式を迎える。

そんな南三陸町の成人式の実行委員長を務めるのは歌津地区出身の千葉秀くん。

現在も町内に残っている人を中心に20名ほどが実行委員となったなかで、歌津、志津川、入谷、戸倉地区それぞれ出身の新成人1名ずつが代表となり、実行委員長、副実行委員長を選出した。実行委員長を務めることになった千葉くんは「じゃんけんで負けたから選ばれただけですよ」と謙遜するが、周囲は納得の表情だ。

実行委員会の会議でのようす

故郷の復興に向け、ボランティアにも参加

東日本大震災が襲ったのは千葉くんたちが中学1年生のとき。高台にある中学校から、眼下に見える町中にあった自宅が流されていく光景を目の当たりにした。

「なんだか現実のことのように感じられないというか。そのときはただ帰る家がなくなっちゃったけどどうしよう、くらいにしか考えられなかった」と話す。

通っていた中学校がそのまま避難所となり、友だちや知り合いもいっしょの日々を過ごした。「みんなといっしょだったことがとても心強かった」

小さいときから外遊びが大好きで、学校ではサッカー部に所属していた千葉くん。体力には自信があった。大人たちにまざって、支援物資の運搬や仕分けや、薪割りなど汗を流した。

しばらくすると、地元の海水浴場のビーチクリーンのボランティアにも参加するようになった。小さいときから泳いでいた思い出が詰まった海水浴場。がれきで埋め尽くされてしまったその浜を復活させたいという想いで、友人らにも声をかけた。

「美しい砂浜を復活させて、自分たちがそうだったように子どもたちが自由に遊びまわれる砂浜にしたい」と、砂浜に混ざった細かな異物までていねいに取り除く地道な作業を続けた。千葉くんは小学生などのボランティアをまとめるリーダーも経験。遠くから訪れたボランティアには震災前の南三陸町の町並みや、震災体験などを語り部として話すようになった。

「震災前は話したこともなかった町の大人たち、遠くからのボランティアなど、年下も年上もつながりが広がったんです。そうして人の出会いを重ねていくなかで。この町のよいところは“人がよいところ”なんだなって改めて思ったんんです」と千葉くんは話す。そして、「小さいときから海で釣りをしたり、泳いだり、この町が好きだった。景観が大きく変わってしまってもこの町が好きという想いは変わらなかったです」と続けた。

千葉くんの実家のあった伊里前地区は大きな変貌を遂げることになった

大きな壁をともに乗り越えてきた仲間とともに

高校を卒業して就職先を探す際にも進学や就職で町を離れていく同級生が多いなか、千葉くんは町内にこだわった。現在は町内の土木建築工事を行う企業に勤めている。防波堤工事やテトラポッドの製造など町の復興工事に直接的に関わる仕事だ。

「なんでもこなすことのできる上司がいま身近でいちばん尊敬できる人。自分も大型免許をとって早くいろいろな仕事を任されるようになりたい」と新成人としての目標をたてる。

町内に残る若者は少ない。だからこそ、苦楽をともにした同級生が一同に会する成人式は貴重な機会となる。「久々のみんなとの再会を明るく楽しく過ごせたらいいなと。暗く、しんみりというよりは明るく盛り上げたいですね。今からみんなに会えるのが本当に楽しみ」と話す。

南三陸町に残った人も、町を離れなければならなかった人も、震災からの大きな壁をともに手を取り、支え合い、乗り越えてきたかけがえのない仲間だ。

南三陸も未来に向けて、一歩ずつ歩みをすすめるように、ここで育った子どもたちも新たな門出を迎える。南三陸で育ったということを誇りに、そしてともに壁を乗り越えてきたという経験を胸に、全国各地でそれぞれの道を歩み、活躍していく新成人の姿が今から楽しみで仕方ない。

 

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ライター 浅野 拓也
1988年埼玉県生まれ。学生時代はアフリカや中東、アジアを旅したバックパッカー。卒業後は、広告制作会社でエディター・ライター業を経験。2014年に取材でも縁のあった南三陸町に移住。南三陸をフィールドにした研修コーディネートを行うかたわら、食・暮・人をテーマにしたフリーランスのライターとして活動している。