ふるさと納税を活用し、町が民間の事業を応援。「おらほのまちづくり支援事業」

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災害公営住宅の整備が完了するなどハード面の整備が整えられる一方、ソフト面での充実が求められている南三陸町。ふるさと納税を財源とし、民間の主体的な事業を応援する「おらほのまちづくり支援事業補助金」について南三陸町担当課に伺いました。

民間の自由な発想を町が応援!

――「おらほのまちづくり支援事業補助金」とは、どういったものでしょうか?

行政という枠に縛られず、民間の自由な発想のもとに主体的に行う事業を、町が補助金という形で応援する町独自の制度です。震災前から行っておりましたが、震災があり一度途絶えたあと、平成25年から本格的に再開しました。

高齢者支援などの公益の事業、交流人口拡大のためのイベント開催、町への定住を促す活動、結婚、子育て支援など支援対象は多岐にわたっています。平成25年度から昨年度まで、累計51事業、3000万円の補助を行ってきました。

――南三陸町民がやりたい事業を町が応援してくれるということですね。申請の審査にあたってはどのようなことを重視しているのでしょうか?

もちろん公費を使うので、自由とはいえ一定のルールや制約があり、審査もあります。「公益性」「全町規模」「集いや賑わいの創出」などといった言葉が申請書には書いてあります。しかしそれ以上に大切なことがあると私たちは考えています。

それは、「自ら進んで主体的にやること」「長続きすること」「活動の先に見据えている未来があること」「スタートアップのきっかけ」となる事業であることです。

失敗を恐れずに、挑戦する心意気が大切。動かなければなにも始まらないですから、町としては、短期的に事業が成功するかどうかよりも、積極性や将来性を評価していきたいですね。

財源は、ふるさと納税の寄付金

――この補助金は財源にもこだわりをもっていると伺いました。財源はどのようになっているのでしょうか?

はい、この支援事業は、全国のみなさまからいただいた「ふるさと納税」の寄付金を活用しています。平成27年度には1000件を超える「ふるさと納税」を南三陸町はいただきました。

「震災があった南三陸町であっても、豊かな自然に恵まれたなかで、明るく、楽しく、住民がイキイキとした町であってほしい」と寄付者の方々は思っていることでしょう。

住民自らが主体的に町を盛り上げようとする「おらほのまちづくり支援事業補助金」の予算にあてることが、そうした寄付者の想いにこたえることにつながると考えています。

――ふるさと納税の使途が目に見える形で表れていることは、寄付する側にとってもうれしいですね。

まさに、それを期待しています。補助金を使っているイベントや事業に、寄付をしていただいたみなさんも参加するなど交流を深めることによって、町とのより深い関係づくり、南三陸町のファンになるきっかけとなることも期待しています。

「おらほのまちづくり支援事業補助金」を使って開催された「芋煮会」。関東などからも多くの参加者が駆けつける秋の恒例イベントとなっている

主催者も参加者も町に誇りを感じる事業

――震災から6年以上がたった南三陸町で、これから求められる事業とはどういったことになるでしょうか?

「おらほのまちづくり支援事業」に以前採択されたこともある「盆踊り大会」がひとつのヒントになると考えています。

以前から各地で行われていた盆踊りが、震災後途絶えてしまっていました。そんなとき、町に住む若者が自ら、「仮設のさんさん商店街で、盆踊りをやりたい」と声をあげてくれたんです。「おらほのまちづくり支援事業補助金」でも協力し、たったひと晩の開催でしたが、被災者が昔のお盆の夜を思い出しただけでなく、震災後集まってきた移住者との交流、帰省客が郷土愛を育むことにつながっていました。

主催者の若者たちは、このイベントを通じて達成感や充実感を感じられたのはないでしょうか。もしかしたら、こうしたイベントがあることが主催した若者の定住につながっているのかもしれません。

企画をした人も、企画に足を運んだ人も、共に満足感を得られるイベント。これは、決してお金に換算できるものではありませんね。

南三陸ふっこう青年会が企画する盆踊り

――行政が主導で、住民がやらされているのではなく、住民自身が声をあげ主体的にやったからこそ、参加者も主催者も満足できるものができあがったのですね。

こうしたイベントは行政が主導して、かっちりとしたものでは面白いものはできないと思っています。

町民が意欲的に、楽しみながらやっていることを支えるのが行政の仕事ではないか?発案者はあくまで町民であり、行政に求められる役割としては、何を支えるのかを判断することだと考えています。

民間の自由な発想こそが、役所の苦手なソフト事業を豊かにする。民間と行政のお互いの強みを生かし、補完しあうことこそが「協働」ではないか、と考えています。

震災から6年の今こそソフト面の充実を

――民間の得意分野と、行政の得意分野。それぞれが得意なことを担う「協働」の事業が大切になってくるのですね。震災後6年というタイミングだからこそソフト事業が求められるのですね。

災害公営住宅も完成し、高台移転もすすんでいます。新たなコミュニティの再構築が必須となり、よりいっそうソフト面の充実が求められています。そして、それこそ民間の力が存分に発揮できる分野であると思っています。私たち行政としては、面白い事業、プロジェクトがどんどん町民から提案されることを期待しているのです。

――これまで支援を行ってきた51もの事業。具体的にどのような目的で、どのようなプロジェクトを行っているのか。また、それぞれがめざす「おらほのまち」とは?「南三陸なう」では、今後1年間かけて、さまざまな事業に迫っていきたいと思います。

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