古くより森里川海のつながりの中で生きてきた南三陸の人々。その中で代々受け継がれてきた産業、なりわい、そして人々の暮らし。このまちは、祖父母、そして父母の姿は、子どもたちの目にどのように映しだされているのだろう。子どもたちから見た南三陸の世界を描いて行きます。
海で育ち、海で遊ぶ
今回は歌津地区泊浜の漁師、高芳丸船長の高橋芳喜さんの長男、高橋芳雅(よしつね)くんのところにお邪魔してきました。
学校が休みの日曜日朝7時。芳雅くんと一緒に、父芳喜さんの船に乗せていただきました。目的は大好きな釣り。
天気は快晴、波も穏やか。とても気持ちのよい朝でした。
船に揺られて15分。到着した場所で、芳喜さんがなにやらロープを上げ始めました。ロープの先には、ぎゅうぎゅうにひしめきあう、大きなホヤ。4年ものの自慢のホヤは手のこぶしよりも大きく、プリプリでした。
「触っても平気?」「触って見たい!」
ロープの先に着いたホヤを恐る恐る触る芳雅くん。
ホヤのロープからとったのは、『エラコ』
今回はこれを釣りの餌にするそうだ。
「ホヤ上げすると水がかき混ぜられて、魚がよく釣れるようになる」
芳喜さんの話を「なるほど」と思いながら聞く。
ホヤをあげたら早速釣りを開始。餌をつけてもらい、いざスタート。手慣れた手つきで、リードを海に垂らしていく芳雅くん。
この日の狙いは、ネウ(アイナメ)とカレイ。
他の釣竿にはあたりが続く中、芳雅くんの釣竿にはなかなかあたりがこない。
「パパつれなーい」
すぐに飽きる。
「地面をトントンって叩いて、ゆっくりスーって引き上げるんだよ」
「よしつねーーー。竿!」
飽きては他のものに興味を示し、父になんども促され、釣竿を握る。
そんなことを繰り返すこと1時間。
「ほら、引いてるぞ!」
芳雅くんの竿が引いている。
「あ、きた?きた!!」
「ネウかな?ネウかな??」
「つれたーーーー!」
満面の笑みで釣った魚を見せてくれる。
その後も何度もあたりがかかる。
芳喜さんも嬉しそう。
2時間ほど釣りをすると、カゴはネウとカレイでいっぱいになった。
父の背中を見て、海に親しむ
「ねえねえ。質問していい?」
岸に帰る途中、芳雅くんにそんな質問を投げかける。
「えーーー」
「あ。そのノートなに書いてあるの?」
「芳雅くんが話したことだよ」
「見せて!」
「じゃあさ、私がこれに書くから、読んで答えて!」
「いいよ!」
「う み は す き で す か」
「すき!」
「ど ん な と こ ろ が す き ? 」
「さかながいるところ!」
「た の し い の は な に を し て い る と き ? 」
「つり!」
「パ パ が う み で し ご と を し て い る の は ど う で す か ? 」
「ついていきたい」
「お お き く な っ た ら な に に な り た い ?」
「ぱぱみたいなりっぱなうみのりょうしになりたい」
「道を逸れなければそれでいい。自分もそうだったけど、あとを継げと言う気はない。自分にとって海は遊ぶところ。稼ぐところ。それをちょっとしたことでもお手伝いしてくれたら嬉しい」
そう話す父、芳喜さん。
海で働く父の姿、そして海に対する思い。
言葉で言わずとも、それをしっかりと受け止め、受け継ぐ義雅くん。
子どもの頃から海と触れ合い、自然の中に溶け込みながら暮らす。南三陸の漁師の歴史は、きっとこうやって続いてきたのだろう。