志津川湾って、すごい!シリーズvol.8「なんでこんなにタコが美味しいの?」

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「志津川湾って、すごい!」シリーズ、相変わらずではあるが海研一がお届けする。今回は志津川湾の顔になりつつある「タコの美味しさの謎」に迫る。

マダコとミズダコ、二種類のタコがとれる地域

まずタコの基礎知識として、タコにもいろいろ種類はあるのだがタコという名前のタコはいないことを知っておこう。暖かい南の海には人を死に至らしめる毒を持ったヒョウモンダコなんていうのもいるが、安心してくれ、志津川湾にはいない(はずだ。今後、温暖化でどうなるかはわからないが。) 志津川湾ではマダコとミズダコが有名であり、ミズダコは通年(盛期は夏場)、マダコは10月~12月に水揚げがある。実はこれもすごいことなのだが、この両方のタコがとれる場所というのは日本でもこの東北地方だけだ。

このマダコとミズダコ、どちらも味が良いことで広く知られ、そのためタコがキャラクターにまでなっている。志津川湾の近くでは、いろいろなところでタコのキャラクター「オクトパス君」に遭遇する。旧志津川町時代から宮城県内で広く認知され、合格祈願グッズや復興シンボルグッズのモデル、震災復興・地域振興のマスコット的存在となっている。

志津川湾の環境がタコを美味しくする

なぜタコが美味しいのだろう。

志津川湾は海藻類が量も種類も豊富であり、その海藻を餌とするアワビやウニ、カニなど生き物たちがタコの餌となるのだが、タコが美味しい理由は、海藻を土台とする多様性豊かな海でタコも美味しい餌を食べているからということだ。

大きく育った志津川湾産のマダコは、身が締まっている上に味に深みがあり、兵庫県明石市と肩を並べ「西の明石、東の志津川」とも言われ、「志津川タコ」のブランド名で高い評価を得ている。すごい。

それから志津川湾にはタコの天敵であるウツボがほとんど存在しないため、タコにとって住みやすい環境なのだ。

海藻類が豊富な理由は太平洋を流れる海流にある。これまでのシリーズでも紹介しているが、三陸沖合は冷たい海流(親潮)と暖かい海流(黒潮)が混ざるところであるため、冷たい海流を好む海藻も、暖かい海流を好む海藻もいる。だから種類が豊富になり、その豊富な餌にタコの餌である生き物たちが集まってくる。美味しくなるわけだ。

低カロリー、高タンパク質で体にも優しい

タコは食べられない骨や皮がないので、料理しやすいというすぐれた食材だ。なので、日本では昔から好んで食べられてきたのだが、外国では多くの民族が“デビルフイッシュ(悪魔の魚)”と呼び食用にしていない。主に食用としているのは、日本を中心に東アジア諸国・地中海沿岸諸国・南太平洋の島々だ。

低カロリー・高タンパク質・低脂質で、コレステロール含有量はイカ類が300mg前後であるのに対し、タコ類は150mgと約半分である。しかもコレステロールの低下作用を持つタウリンまでも豊富に含まれている。

特有の筋線維は弾力性と歯応えがあり好まれ、独特の旨味はベタインというアミノ酸の一種で、エビ・カニ・イカなどの水産物に多く含まれている。美味しく、体にも良さそうではないか。

しかし、ビタミン類が脂溶性・水溶性ともに少ないため、野菜等と合わせて栄養バランスを良くすると良いようだ。また消化吸収率は高いのだが、消化に時間がかかるため食べ過ぎには注意しなければいけない。

美味しく食べるためには、タコ類は「タコ」とひとくくりにせずに、種類にあった調理が望まれる。日本で食用に主として出回っている種類が、この志津川湾でとれるマダコとミズダコなのだが、それぞれに味わいが異なる。

マダコは、味が濃く歯ごたえのよいのでタコ焼きに適し、ミズダコは、味は薄めだが身が柔らかいのでしゃぶしゃぶや刺身をおすすめする。

年間200~300トンのタコを水揚げする志津川湾

タコ類は日本国内で年間約5万~6万t漁獲されているとされ、最も多いのは北海道で、日本全国の約5割を占めている。宮城県のタコ類の漁獲量は、昭和30年代~50年代のピーク時で約3,000tあったが、近年は約1,000~1,800tとなっている。そのうち南三陸町では、年間で約200~300t水揚げ量がある。

実は最近、どうも日本の各地でタコ漁獲が少なくなってきているらしく、またアフリカなどからの輸入タコが日本に入ってこなくなっているらしい。その中でも志津川湾ではタコがまずまず漁獲され続けており、貴重なので高い値段で取引されるようになっている。すごいことだと思う。

タコの漁法にはトロール漁・カゴ漁・釣漁などがあり、素潜り・ダイバー漁などで獲られることもある。この他、暗くて狭い所を好むタコの性質を利用したタコ壺漁も良く知られているが、南三陸ではタコを傷つけずにとることができるカゴ漁が主流である。サバやサンマなどの餌を入れたカゴを夕方設置し、翌朝引き揚げるというやり方だ。

しかし、タコは人間からみて美味しいものをたくさん食べていると感じる。サバやサンマも三陸のものは脂ものっていて美味しいし、アワビやウニやカニなども聞くだけでよだれが出そうだ。餌の方も資源が減っていて貴重なものとなってきているし、ほんとうに味わって食べないといけないと思う。

このように南三陸町とタコの関係は、“タコの吸盤がくっついているような、なかなか離れられない関係”とでもいっておこう。タコに好かれる南三陸町。志津川湾って、すごい!

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