サステナブルでは足りないリジェネラティブな町へ / 光永奏者さんインタビュー

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全国的に、海外からの観光客を誘致する「インバウンド」の取り組みが爆発的な人気を見せており、南三陸町もこれに積極的に取り組んでいます。国際色豊かな観光づくりの取り組みとは?

インバウンドってなんだ?

“爆買い”という言葉が世間を賑わせたのも記憶に新しいように、近年全国的に、海外から日本への旅行者が爆発的に増えています。

外国人が訪れてくる旅行のことを「インバウンド」と言い、しばしば訪日旅行・訪日外国人旅行と訳されます。

逆に国外への旅行は「アウトバウンド」ですね。

南三陸町も、日本の一次産業や文化、美しい食や景観、そして震災の経験を国内に留まらない多くの方に伝えたいと、積極的にインバウンドを促す取り組みをおこなっています。

南三陸での外国人受け入れには欠かせない南三陸在住 光永奏者さんに、町の取り組みについて伺ってきました。

南三陸町在住 光永奏者さん

―最初に、奏者さんのプロフィールを教えてください。

光永奏者(ミツナガソウシャ)と言います。みんな「ソーシャ!」って呼びますね。

外国人というか、父がアメリカ人で母が日本人のハーフです。アメリカの生まれですが幼少期に東京に来て、それからはアメリカと行き来しながら暮らしてきました。

―日本語ペラペラですよね。どうして今南三陸にいらっしゃるのですか?

東日本震災が起きて、アメリカのとある団体から被災地へのコーディネートを頼まれ、被災地へ来るようになりました。

それがきっかけで南三陸町を好きになり、この町の未来が気になるようになり、2年前から志津川に空き家を借りて、それからは町に住居を置いています。

―どんなお仕事をされてるんですか?

株式会社コモンアース」という会社の代表取締役を務め、今は英語を活かした英語キャンプ“アースキャンプ”の事業や、国際交流のコーディネート、翻訳・通訳の仕事などをしています。

英語を使って「人と人」「都会と地方」「自然と人」「アメリカと日本」など、あらゆるものを“つなげる”というのが活動のコンセプトですね。

―どうして「南三陸町」だったんですか?

人が好きだし、自然が好きだし、仲良い人もできたし・・・というのが理由だと、最初は思っていましたが、他の市町村と何が違うか深く考えました。

気づいたことは、この町の姿勢がとてもオープンであること。

「ソーシャ、これやってみなよ」と言って、いろいろ試させてもらえたり、任せてくれます。

外国人でも抵抗なく受け入れてくれる、入りやすい場所だなと感じたことが“オンリーワン”の理由ですね。

国際色豊かな観光づくりへ!町の取り組みは?

南三陸へのインバウンドのために

―町のインバウンドのために、どんなことに取り組んでいますか?

南三陸町では、公立南三陸病院再建へのご支援をいただいたことをきっかけに、台湾にターゲットを絞ったインバウンド政策を進めています。中国語の観光ウェブページの作成などをおこなってきましたが、でも、やはり世界に対して一番リーチできる言語として、英語での翻訳やウェブページがないのはおかしいと思いました。

そこで、観光協会のウェブサイトを英語圏の方向けに翻訳し、つくりなおすことにまず取り組んでいます。

南三陸町観光協会 英語版
Minamisanriku Journey フェイスブックページ

これらのウェブサイトやSNSの更新や管理を行うのが、中心となる仕事の1つです。

―台湾からの旅行者と、欧米からの旅行者の違いはありますか?

現在では、台湾からは教育旅行や研修旅行でのグループ旅行が多いのに対して、欧米からの旅行者は個人旅行がほとんどです。交通手段をはじめ、この町ではまだ海外からの個人旅行の方々を満足に受け入れられる環境に無いのが現状です。

―どういった点が不足ですか?

表示や標識、案内の少なさや、英語翻訳の少なさもそうですし、無料公衆無線LAN(Wi-Fi)が少ない点も不便です。

当初は英語表記の地図すらなかったので、英語の地図を作成してウェブに掲載しました。ハード面でもソフト面でも、準備がまだ足りていない感じがします。

長期的な目で考え、一歩ずつの前進をしています。

―ハード面での不便さはありますよね。

これから復興が進んでいくことでそうした環境は整備されていくと思っているので、今はまず情報発信をして行こうと思い実施しています。

―ソフト面でもそうした問題点はありますか?

外国人を受け入れられる姿勢づくりも必要ですね。

英語を話せるような人を増やすとか、町内企業の経営者が外国人の体験や宿泊を受け入れられるような意識を持ってもらうとか。

でもこの町は、そういう壁や抵抗が少ないと思っています。それは震災のあと多くの支援を受けたことがきっかけではないかと思っています。

助けてくれる人たちは、どこの国の人だろうと関係なかったはずなので。

―奏者さんがこの町に決めた理由もその点、と仰っていましたもんね。

ほかには、食への対応も重要です。ハラル(ハラール)の問題ですね。海外からのお客様には、宗教的な理由で食べられないものがある方もいらっしゃいます。大豆がダメとか、お肉がダメとか、そういう対応をしてくれる宿も町には現れてきています。

―町の方向が、徐々に受け入れ姿勢に変わって行っているんですね。

そういうオープンさや柔軟さを持ち合わせているという意味で、この町は日本のインバウンドのモデルケースになり得ると感じています。

国際色豊かな観光づくりへ!町の取り組みは?
英語表記の町内案内

欧米人が求む“わかりやすい魅力”

―欧米からの旅行者の方は、どんなことを求めるのでしょうか?

訪日外国人が旅行の際に重要視するのは、“わかりやすいこと”と“魅力的であること”。そして、インパクトですね。

例えば、「京都」と聞いたら何を思い浮かべますか?「お寺」とか、「舞妓さん」とかですよね。「鳥取」と聞けば「砂丘」だし、「石巻市の田代島」と言えば「猫の島」です。

―なるほど、わかりやすいインパクトを持っているし、オンリーワンの魅力ですね。

町の魅力を謳う際に「食・自然・伝統」では、わかりにくいしインパクトに欠けます。

町としての魅力を大きくして、わかりやすさをつくっていくことももちろん、「三陸の魅力はこれ!」という風に、石巻や気仙沼・松島などと連携して、広域的にもその魅力を作っていくことが必要でしょう。

まずは「面白い、変わってる」ということをきっかけに、町に足を運んでもらうことがいいでしょうね。

オンリーワンな町を目指して

―どんなことがこの町のオンリーワンになり得ると思いますか?

南三陸町は、豊富な地域資源を活かした持続可能(サステナブル:sustainable)な町を目指しています。

僕はサステナブルでは足りないと思っていて、「リジェネラティブ:regenerative(再生力のある)」な町になることで、オンリーワンな町になって行くと思っています。

サステナブルを学べる、体験できる、知れる町としていくことで、オンリーワンになって行きます。

さらにはバッググラウンドとして、震災で得た気づきや学びもある、というのはとても強みになるんじゃないでしょうか。

というのを目指して、「サステナブル・ジャーニー」を打ち出しています。

―なるほど!どんな旅ですか?

自転車で町をまわる旅の提案です。

キャッチコピーは「海、農、山を舞台としたまなび旅を。それは、単なる旅ではなく、新しいライフスタイルへの扉。」

―田束山MTB大会やツールド東北など、自転車に縁の多い町ですしね。

例えば、志津川駅で降りたらすぐそばで自転車が借りられ、自転車で町を周遊できる。途中で疲れたらBRTには自転車のラックがついているとか、バス停に駐輪場があるとか。

自転車で周遊できる町づくりを提案しています。

―車社会なので、町の人にはない発想でしたね。

旅行者にとって交通の便が悪いことを、逆に活かしてサステナブルな旅を提供するというものです。エネルギーを使わない自転車はエコですし、それ以前にこの町で観光するにはいちばん便利。かつ健康的ですしね。

―自転車文化のまち、いいかもしれませんね!

役場だけじゃなくて、山の管理者やMTB大会の人たちなど、みんなが関わって、自転車で回りたくなる町づくりを進めていってほしいと思っています。

震災直後はガソリンが無くて、自転車で移動していた人がたくさんいました。

その結果「こんな町だったんだ」という、見え方の違う町の姿があったという話を聞きました。

―車では立ち入れないような場所にも、自転車でならアクセスできますからね。

いつでも立ち止まって、写真を撮ったり誰かと話をしたりできる、という魅力もあります。自動車ではただ目的地に向かうだけなのが、自転車には道中の楽しみがあります。

国際色豊かな観光づくりへ!町の取り組みは?

外国人から見た町の魅力

―外国人から見た町の魅力を知りたいのですが、まずは町に住んでいる外国人としての目線で教えてください。

新鮮な海の幸・山の幸と、町の人たちのオープンさでしょうか。外国生まれの僕でも受け入れてくれる地域柄が心地よいと感じます。

―では旅行で訪れた外国人という目線では?

そういった人たちにも同じく心地よさがあると思います。

それから“体験”がいろいろある点。外国人は体験することが好きなので、体験やイベントが豊富にあるのは魅力的だと感じます。

豆腐作りやそばづくり、味噌づくりなど、まだまだ知られていないけれど魅力的な体験もたくさんありますし、健康食・自然食であったり、それを自分で作って食べられるなど、日本らしい体験ができるところがいいですね。

―外国の方も居心地の良さを感じる町なんですね。

町内の人が外国の言葉を一生懸命喋ろうとしている、という雰囲気が出てくると、歓迎されていると感じて、南三陸LOVEになって行くんじゃないですかね。

田んぼで農作業しているおじいさんに道を聞いたら、ちゃんと英語で受け答えしてくれるとか。

―すごい面白いしステキですね!観光スポットとしては?

神割崎が人気ですね。岩場の迫力ある海の風景は外国人には新鮮かもしれません。

「カリフォルニアのビッグサー海岸みたい」とよく言われます。

町の未来に思いをはせて

―外国人の目線として、町の未来に期待することはありますか?

初めてここに来た時に、海と山と里がコンパクトに密集された地域に全部きれいにそろっていて、“田舎のモデル・ジオラマ”のような風景に心を打たれました。

それがますます町外や、海外とももっとつながりをもてる地域を目指していきたいです。国内外多くの人と、この町に来て感じた魅力を共有していきたいと思っています。

―この町がとても好きなんですね!

この町に長くいたいと思って、今は家のリフォームに一生懸命取り組んでいます。

国際色豊かな観光づくりへ!町の取り組みは?

南三陸町の居心地の良さ

筆者自身も、震災を経て町へ移住してきた移住5年生です。

実は南三陸町にはそうしたIターン者の若者がとても多く、その多くが町の溢れる魅力に取りつかれ、また町の人に温かく受け入れられ歓迎されることに、本当に居心地のよさを感じています。

それは移住に限らず、旅行者の方々や、さらには外国人の方々にも感じていただけている事でした。

数ある魅力の中でも、ここ南三陸町の魅力は“人”にあるのかもしれません。

ぜひ町を訪れ、新しいまちづくりに取り組む現地のたくさんの人たちの光に触れてみてください。

インフォメーション

南三陸町観光協会 英語版

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